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<弁理士コラム>発明の単一性について(その2)

複数の発明が一定の技術的関係を有している場合にそれらの発明は発明の単一性の要件を満たす、と前回説明しました。
今回は、一定の技術的関係を有している場合について説明したいと思います。

「一定の技術的関係を有している」は、審査基準の中では「同一の特別な技術的特徴を有している」と表現されています。すなわち、二以上の発明が同一の特別な技術的特徴を有しているか否かによって発明の単一性の要件は判断されます。
※これ以外の場合であっても発明の単一性の要件を満たすことがありますが、ここではそれらの詳細な説明は省略します。

さて「特別な技術的特徴」とは一体どのような技術的特徴なのでしょうか。
審査基準では「『特別な技術的特徴』とは、発明の先行技術に対する貢献(先行技術との対比において発明が有する技術上の意義)を明示する技術的特徴を意味する。」と説明されています。
これだけではよく分からないと思いますのでもっと簡単に表現しますと「『特別な技術的特徴』とは、先行技術に記載されていない技術的特徴を意味する。」といったところでしょうか。
ただし、先行技術に記載されていないとは言えその技術的特徴が単なる周知技術、慣用技術の付加、削除、転用等であって、新たな効果を奏するものではない場合、先行技術に対する単なる設計変更に過ぎないような場合には、その技術特徴は「特別な技術的特徴」とはなり得ません。

それでは、二以上の発明が「同一の特別な技術的特徴」を有している場合の例をご紹介します。

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例1:
【請求項1】
 高分子化合物A(酸素バリアー性のよい透明物質)。
【請求項2】
 高分子化合物Aからなる食品包装容器。
(説明)
請求項1の高分子化合物Aは、バリアー性のよい透明物質であり、先行技術に対する貢献をもたらす特別な技術的特徴であるとします。
一方で請求項2の食品包装容器は、高分子化合物Aを含んでいます。
従いまして、請求項1に係る発明及び請求項2に係る発明は、いずれもこの技術的特徴(高分子化合物A)を有しているので、同一の特別な技術的特徴を有することになります。

例2:
【請求項1】
 光源からの照明光を一部遮光する照明方法。
【請求項2】
 光源と光源からの照明光を一部遮光する遮光部を備えた照明装置。
(説明)
請求項1の照明光を一部遮光する点が先行技術に対する貢献をもたらす特別な技術的特徴であるとします。
一方で請求項2の照明装置は、照明光を一部遮光する遮後部を備えています。
従いまして、請求項1に係る発明及び請求項2に係る発明は、いずれもこの技術的特徴(照明光を一部遮光する点)を有しているので、同一の特別な技術的特徴を有することになります。
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これらは、審査基準に記載されている例であり、シンプルで理解しやすいものとなっています。このように理解しやすいものは実務では珍しく、実際は多くの方がその判断に悩まれることと思います。また、特別な技術的特徴は先行技術に対する相対的なものですので、前提として先行技術を的確に把握することが重要になりますが、これもまた一般の方には難しいことと思います。
そのため、専門家である弁理士の判断のもとで、複数の発明を一つにまとめて出願するか否かを決定することを強くお薦めします。

弁理士 中村一樹

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