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<弁理士コラム>特許出願の審査請求制度について(第3回)

 審査請求制度に関する第1回目のコラムでは、特許出願に特有の「審査請求制度」の概要について説明しました。また、前回のコラム(第2回)では、特許出願は、各出願人が考える目的と価値によって、「誤算的出願」、「陳腐化出願」、「防衛(予防)的出願」、「基本的出願」、「流行的出願」などに分けられて説明されることがあり(吉藤,熊谷補訂「特許法概説〔第13版〕」有斐閣,1998年,p.398-399)、発明が時代の要請に応じたものや一過性のもの(流行的出願)であるときは、早めに審査請求を行うのがよいこと、防衛(予防)的出願では、出願と同時に審査請求を行わなくてもよいこと(場合によっては、審査請求を行わず技術の公開のみを目的とすればよいこと)を述べました。

 その他の「誤算的出願」、「陳腐化出願」、「基本的出願」の場合、審査請求の要否や時期はどのように考えればよいでしょうか。

 特許出願の中には、出願当初は新規性があると判断していたものの、その後に得られた情報などにより、新規性がないことや実際には役に立たないことが判明する場合があります(誤算的出願)。また、出願当初は新規性があっても、他の新技術が開発されて、相対的に価値が低下することもあります(陳腐化出願)。このように、特許出願した発明の新規性や有用性に関する判断が出願後に変わる可能性がありますので、出願と同時に審査請求をするのではなく、3年の審査請求期間内の適切なタイミングで、審査請求の要否を再検討するという方法もあります。

 また、発明には、基本的なアイデアであるがゆえに、実施化には相当の期間を必要とするものがあります(基本的出願)。このように、出願時には、自社と他社のどちらも製品を市場に出す可能性の低い発明であれば、流行的出願とは反対に、審査請求を急いで行わなくてもよいと判断することができます。但し、基本的なアイデアについては、特許権として取得しておきたいので、審査請求時期を逃さないことが大事になります。

 基本的出願について特許権を取得できれば、基本的なアイデアの周辺技術については、公開だけを目的とする防衛的出願を行い、審査請求は行わず、審査請求料や特許料を節約することもできます。防衛的出願は、公開されれば、新規性違反(特許法第29条第1項)や拡大された先願の地位(特許法第29条の2)によって、自社の出願後にされた他社の出願を排除できます。もし掛けられる費用があれば、周辺技術についても将来的には特許権を取得しておきたいところです。

 以上、コラム3回分にわたって、特許出願に特有の「審査請求制度」を詳しく見てきました。発明には、特許権としてすぐに取得したいもの、数年後に必ず取得すべきもの、特許権の必要性が判断しづらいものなどがあります。ご相談時の打ち合わせでは、これらの観点についても考慮しながら、審査請求の要否や時期をアドバイスしております。

弁理士 三苫貴織

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