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<弁理士コラム>分割出願について


 特許出願には様々な種類の出願がありますが、その中に分割出願という出願があります。
 分割出願とは、二以上の発明を包含する特許出願の一部を新たな特許出願として出願することを言います。簡単に言いますと、既に出願した特許出願を基にして、その出願の範囲内で新たな出願を行うこといいます。基となる特許出願を「原出願」や「親出願」と言ったり、新たに行う出願のことを「分割出願」や「子出願」と言ったりもします。
 この分割出願ですが、多様な用途で利用されます。

《利用例1》
 典型的な利用例の一つに原出願が単一性の問題を指摘された場合があります。特許出願は、関連性のない二以上の発明がクレームに含まれている場合、単一性の問題を指摘されることがあります。具体的に言いますと、クレームに「A」という発明と「B」という発明が含まれていた場合に、「A」と「B」との関連性がないと判断された場合に単一性の問題が指摘されます。要は、なんでもかんでも一つの出願に含めようとすると、それはできませんよと指摘されるわけです。
 この指摘を解決する手段の一つが分割出願です。「A」「B」が含まれる原出願から「B」を削除し、削除した「B」を分割出願として出願します。つまり、「A」「B」が含まれていた一つの出願を、「A」の出願(原出願)と「B」の出願(分割出願)の2つの出願に分けるのです。まさに、「分割出願」の名の通り、一つの出願を「分割」するわけです。

《利用例2》
 利用例1では、関連性のない二以上の発明が含まれている場合でしたが、関連性がある二以上の発明(以下、二つの発明を「A」と「A´」とします)が含まれている場合でも分割出願を行う場合もあります。
 審査が進んでいくと、クレームに含まれる一部の発明のみ許可されている、という状況になることがあります。すなわち、「A」は許可されているものの「A´」は拒絶されているという状態です。特許出願は、一つでも拒絶されている発明がある場合には登録となりません。したがって、せっかく「A」が許可されているものの「A´」が最後まで許可されなければ、両方の発明が権利化されないこととなってしまいます。要は共倒れとなってしまいます。
 このような共倒れを防ぐために、原出願から拒絶されている「A´」を削除し、削除した「A´」を分割出願として出願することがあります。つまり、原出願には許可されている「A」だけを残してすんなり権利化してしまい、「A´」については新たな出願(分割出願)として改めて拒絶を解消する対策をとるわけです。このようにすることで、その後に「A´」の拒絶が確定してしまったとしても共倒れを防ぐことができます。
 この利用例でも、一つの出願を「A」の出願(原出願)と「A´」の出願(分割出願)との2つに分割していますので分かり易いです。

《利用例3》
 最初に分割出願の説明として、「親出願の範囲内で行う出願」と説明しましたが、分割出願は親出願の一部だけ抜き出したものに限られません。親出願と全く同じ内容とした場合も親出願の「範囲内」と言えますので、分割出願として問題はありません。
 特許出願の審査では、このまま審査や審理が進むと特許出願の拒絶が確定してしまう可能性がある状態となる場合があります。このような時に分割出願を行う場合もあります。具体例を挙げますと、拒絶査定不服審判を請求する場合には、その後に補正や分割出願を行う機会がないまま拒絶が確定してしまう可能性がありますので、このような場合に、分割出願を行っておけば、万が一親出願の拒絶が確定してしまっても、分割出願で再チャレンジをすることができます。
 また、早期審査等を利用することで親出願が早期に特許となった場合に、念のために分割出願を行うこともあります。早期に特許となった場合には他社動向がまだ分からないこともありますが、念のために分割出願を行っておけば、他社の動向に応じた権利化を分割出願で目指すことができます。
 このような念のために分割出願を行う場合、とりあえず親出願と全く同じ内容のものを分割出願とすることがあります。つまり、「A」という発明の親出願から、「A」という同じ発明の分割出願をするわけです(ただし、この場合には分割出願の審査前に分割出願に補正をすることになります)。
 親出願と全く同じ内容でも分割出願というのは、慣れていないと違和感がありますね。一体何を「分割」しているのか・・・と感じます。「分割」というより「分身」というほうがしっくりきますね。

《利用例4》
 少し複雑になってきますが、「親出願の範囲内」というは、親出願のクレームの範囲内に限られません。親出願の明細書も「親出願の範囲内」に含まれます。これを利用して、親出願のクレームに記載されていなかったものの明細書に記載されたいた発明を分割出願のクレームにして出願することもできます。この場合には、分割出願のクレームは、親出願のクレームと全く違うものになります。つまり、クレームだけ見れば、「A」という発明の親出願から、「B」という発明の分割出願をすることになるわけです。
 こうなってくるともう「分割」とはかけ離れた印象ですが、このような出願も「分割出願」といいます。

 このように、分割出願は、便利がゆえに、一見して「分割」とは思えないような方法でも利用されます。説明した4つの例以外にも分割出願は様々な状況で利用されます。分割出願を利用することで権利化を有利に進めることができる可能性もありますので、権利化の際にお困りの場合には特許事務所等の専門家に相談することをお勧めします。弊所でも応じますので、お気軽にご相談ください。

弁理士 藤澤 厚太郎

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