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<弁理士コラム>建築プロジェクトにおける建築主と建築設計者の関係において、意匠権の取得、意匠権の譲渡⼜は実施許諾で、どのような点に気を付ければよいでしょうか?

建築プロジェクトでは、⼀般的に、建築主が、デザインアーキテクトや建築家、設計会社などの建築設計者(建築⼠事務所)に建築設計を委託します。その際、建築主と建築設計者の間で業務委託契約が締結されます(建築⼠法22条の3の3(契約の書⾯締結))。
その一方、建築設計者が⾏った建築設計において創作された意匠(デザイン)について、「意匠登録を受ける権利」が創作者である建築設計者に帰属します(意匠法3条1項)。意匠法では、「意匠登録を受ける権利」を有する者が特許庁への出願をすることができると規定されています。
建築設計者は、建築物をデザインしたとき、建築物に関する「意匠登録を有する権利」を有します。そして、建築設計者は、「意匠登録を受ける権利」に基づいて「意匠登録出願」を行うことができ、特許庁での審査によって登録が認められた場合、「意匠権」を保持することができます。
なお、「意匠登録を受ける権利」は譲渡可能な権利ですので(意匠法15条2項で準⽤する特許法33条1項)、特許庁へ意匠登録出願を行う前に、建築主が建築設計者から「意匠登録を受ける権利」を譲り受けて、建築主が出願を行うこともできます。また、「意匠登録を受ける権利」を建築主と建築設計者が共有することで、両者の共同名義で意匠登録出願を行うことも可能です。
将来的なトラブルを回避するためには、業務委託契約を締結するとき、建築主と建築設計者は、「意匠登録を受ける権利」⼜は「意匠権」の譲渡の契約、「意匠権」の実施許諾などの契約も同時に締結することが望ましいと考えられます。
なお、『四会連合協定建築設計・監理等業務委託契約約款』では、意匠登録出願等の⼿続に関する条項のみが定められており、著作権の場合と異なり、意匠登録を受ける権利⼜は意匠権の帰属先については規定されていません。
したがって、上記の四会連合協定による約款を⽤いた業務委託契約を交わす場合、意匠登録を受ける権利⼜は意匠権の譲渡、意匠権の実施許諾などは、「約款以外の契約書」で規定して、別途契約を締結することになります。
(なお、四会連合協定による約款では、建築物及び設計図⾯の「著作権」は、「建築設計者」に帰属するという規定があります。四会連合協定による約款を⽤いた業務委託契約を交わす場合、建築設計者が建築物及び設計図面の著作権を有します。)

オリーブ国際特許事務所では、建築出身の弁理士がご相談に応じることができます。いつでもお気軽にご相談ください。

参考図書:四会連合協定建築設計・監理等業務委託契約約款調査研究会編『四会連合協定建築設計・監理等業務委託契約約款の解説』(⼤成出版社、2020年)

弁理士 三苫 貴織

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