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<弁理士コラム>インドの審査官はどの国の審査結果を優先するのか?


弊所にてインドへの特許出願(主にPCT出願のインドへの国内移行)の担当をさせていただくことがしばしばございますが、インドの審査官が独自の調査や独自の見解をもって新規性や進歩性等の特許要件についての判断をしていると思われる案件は、経験上ではこれまで一度もありません。インドの代理人にこの点について質問を投げかけることもありますが、インドの代理人からもインドの審査官が独自の調査や独自の見解をもって判断するという明確な答えを頂いたことはありません。基本的には、ほぼ全てのケースで他国の審査結果をそのまま利用した審査を行っていると考えられます。

インドの特許審査の実体に関して、2022年5月に独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)から以下の報告書が発行されています。
インドにおける特許・商標・意匠に係る 実務実態調査報告書

以上の報告書では、インドにおける特許出願の新規性・進歩性の審査に関して、以下のコメントがなされています。

『新興国の特許審査は他国の審査結果に基づいて行われることが多いが、インドでも同様 の傾向があると考えられる。具体的にどの国の審査結果が参照されているかについて明確 なことは言えないが、国際調査報告書や米国特許商標庁、欧州特許庁の結果が参照される ことが多い印象を受けている。したがって、FER においてインド特有の観点から新規性・ 進歩性の見解が示される可能性は低いと考えられる。またインドの審査において他国と異 なる引例が議論されることも稀であると考えられる。』

当方のこれまでの経験上でも、欧州特許庁、米国特許庁、国際調査報告書、日本特許庁等で示された文献・見解がそのまま審査報告書(First Examination Report)に記載されるケースが殆どであるように思います。では、複数の国での審査結果が存在する場合にインドの審査官はどの国の審査結果を優先するのでしょうか。欧州特許庁>米国特許商標庁>国際調査報告>日本特許庁というのが、当方の個人的な印象です。英語文献が主に引用される欧州特許庁、米国特許商標庁での審査結果があるのであれば、まずはそれを優先しているのではないでしょうか。

対応する米国出願や欧州出願があるものの、審査結果が出ていない場合は、その他の国の審査結果等を参照するしかないため、仕方がなく国際調査報告や日本特許庁の審査結果を引用するのかもしれません。悩ましいのは、一部または全部のクレームの進歩性が否定された国際調査報告の文献が参照され、その時点で対応する外国出願が登録されていないケースです。この場合、国際調査報告で進歩性が認められたクレームに減縮する補正をしない限り、審査官は他国の登録状況を待つケースが殆どのように思われます。結局のところ、欧州特許庁、米国特許庁、日本特許庁などの対応外国出願が登録とならないと審査が進まない事態に陥る可能性が高いです。

インドにおける特許審査では、他国の審査状況などが大きく影響するため、審査報告書で引用された文献の内容や、文献に対する反論を如何に行うべきかという通常の対処をするのが必ずしも適切とは限りません。弊所では、今後も審査経験を蓄積し、どのような状況であればどのように対処するのがよいかについて、より良いアドバイスできるように研鑽してまいります。

弁理士 長田 大輔

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